急性期リハの教科書

〜急性期リハに必要とされる知識を分かりやすくお伝えしていきます〜

血圧について考える

こんにちは、ヤマトせPTです。

 

皆さん、臨床で血圧が上がった や 下がったなどを感じる場面はあると思いますが、

 

実際に何故上がったのか、あるいは何故下がったのかを考えたことはありますか?

 

今回の記事では、血圧が上がったり下がったりする仕組みと、それが身体にどういった影響を与えるのか

 

ということを一緒に勉強していきたいと思います!

 

参考にする教材はこちらなど!

 (基本的な循環器の解剖生理や病態についてもイラストを交えて分かりやすく解説してくれている1冊です。初学者から急性期リハに関わる方であれば必須とも言えるのでオススメです)

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【この記事の目次】 

 

血圧とはなにか

血圧とは

血圧とは、血液が血管壁に与える内圧のことです。

 

血圧には公式があって、これが血圧の変動を理解する上で「かなり」重要になりますので、しっかりと抑えておきましょう!

 

血圧(BP)=心拍出量(CO)×全末梢血管抵抗(TPR)  となります。

 

ちなみに、心拍出量(CO)の単位は[ L/min]です。

 

心拍出量にも公式があって、心拍出量=心拍数(HR)×1回拍出量(SV) となります。

 

上記の公式から、血圧というのはCO、もっというと心拍数と1回拍出量と末梢血管抵抗に比例している ということになるので

 

" 心拍数が下がる "  or "1回拍出量が下がる"  or "末梢血管抵抗が下がる"

 

いずれかの要因があると、血圧は下がる!ということです。

血圧が下がったときには、上記のどの要素が変わったんだ?!ということを即座に考えられるようになると、状態の理解がスムーズに行くと思います。

 

もっというと、事前のアセスメントである程度の予測が立っていれば

 

離床を行う際にも予め「代償機構が十分に働かないと、血圧が落ちそうだ」と身構えておくことができる、というわけです。

 

こういった知識と評価を合わせて自分の武器にしておくことがリスク管理において最も重要な部分だと思います。

 

 

収縮期血圧拡張期血圧について

収縮期血圧拡張期血圧については、水銀柱と聴診器の測定において、

カフ圧を上げて一度上腕動脈を遮断します。

 

その後、カフ圧を少しずつ落としていきカフ圧の減弱とともに閉塞していた上腕動脈が開存した瞬間の圧力を収縮期血圧最高血圧)といいます。

 

このときに血流が生じるとともに、聴診器でコルトコフ音が聞こえてくるわけです。

 

逆に、カフ圧をどんどん下げていき、コルトコフ音が全く聞こえなくなったところを拡張期血圧最低血圧)といいます。

 

拡張期血圧の直前までは、カフ圧によって弱いながらも上腕動脈が一部狭窄されて乱流が生じているためぎりぎりまでコルトコフ音が聞こえている、というわけです。

 

まあ、ここはさらっと 「こんなもんなんだな」程度で留めていただいてOKです。

 

ただ、次の「平均血圧」はリスク管理においてかなり重要になってくるのでしっかりと勉強していきましょう!

平均血圧とは

ここ!大事です!!

 

平均血圧とは、心拍動に伴い変化する動脈圧の1周期分の平均を意味しています。

・・・ん?

 

となりますよね、細かいことはひとまず置いときます。

 

平均血圧の求め方は、動脈内にて直接測定される動脈圧曲線を積分して求めますが、臨床上では、簡略的に以下の数式で求めます。

 

平均血圧(MAP)=脈圧÷3+拡張期血圧

 

ここで、脈圧とは 収縮期血圧拡張期血圧の差を指すので、以下となります

 

平均血圧=(収縮期血圧拡張期血圧)÷3+拡張期血圧

 

例)血圧120/60mmHgの場合

MAP=(120-60)÷3+60=80

 

で、平均血圧は80となります。

 

※正常値は90未満で、それ以上であれば動脈硬化が疑われます。

 血圧を規定する因子について学ぶ

お次は、血圧を規定する因子についてみていきましょう。

 

前負荷とは、心室が収縮する前にかかる負荷のことで

後負荷とは、心室が収縮したあとにかかる負荷のことです。

 

ちなみに、前負荷も後負荷も、考え方としては

 

負荷が上がれば血圧は上がる

し、

負荷が下がれば血圧は下がる

が、基本になります。

 

ここが理解できれば、血圧変動の理由や原因が推察しやすくなると思いますので、それぞれを説明していきます。

 

前負荷

前負荷とはようするに、拡張終期に心室流入した血液(の量)のことです。

あのFrank-Starlingの法則の肝がここ!ということです(知らない人はググって下さい)

 

心臓にどれだけの血液が還ってきているか

 

が重要になります。心臓に血液が還ってきていないのに、無いものは拍出はできませんもんね。

 

 

なので、前負荷が上がる要素としては

・立位から臥位になった際

・血管内に留まる補液を行った際

・術後などのリフィリング現象 

リフィリング現象 日本救急医学会・医学用語解説集

などがあります。

 

逆に前負荷が下がる要素としては

・脱水傾向(飲水不足や多尿、利尿剤の弊害、電解質異常)

・出血

・血管内から間質などへの水分移行

などが考えられます。

 

血管内の水分量と大きく関わっているため、前負荷の状態を把握するのに水分出納のバランスを診る評価は必須と言えそうです。

 

 

後負荷

後負荷とは、心室が末梢血管の抵抗に逆らって血液を送り出すために必要な圧力のことです。

 

ようするに、どれだけ左心室から先の抵抗感が強いか

 

ということになります。

 

後負荷が上がる要素としては

・末梢血管抵抗の増加(末梢冷感増強など)

動脈硬化

などが考えられます。

 

経験的に、前負荷が下がったことによる血圧低下の代償機構として、後負荷を高めて血圧を維持しようとするのが最初に起こりやすい印象です。

 

そのため、脱水状態の患者さんや、心不全などで心拍出量が低下している患者さんなどは代償的に末梢冷感が強くなっていることが多かったり、離床し始めると冷感が増強してくる様子が伺えると思います。

 

これらは、後負荷を増加させて血圧を維持しようとしていると捉えることが出来ますね。

 

この代償では防ぎきらなくなった時に、どんどんと血圧が落ちてきてしまう、という現象に至ります。出来るだけ早期に気がつけるように、手の冷たさなどはルーティン的に見ておきましょう。

 

逆に後負荷が下がる要素としては

・末梢血管の開大(温熱療法やマッサージなどでの筋内圧緩和によるものも)

・交感神経系の破綻による、血管収縮能の低下(脊損など)

 

脊損の人に起立性低血圧が起こりやすい要因としては、

 

血管の平滑筋を支配している交感神経は胸髄レベルにあり、それらが機能低下することで後負荷をあげられなくなったため

 

に加えて、

 

下肢筋の麻痺などが加わっていれば、筋ポンプ作用での静脈還流量が減少してしまい、

前負荷が低下するため

 

前負荷も後負荷も低下するから、ストンと血圧が下がりやすくなってしまうんですね。

上記のような病態をイメージすれば、前負荷と後負荷の話もイメージしやすいかもしれません!

 

血圧変動が身体へ与える影響

 

リハでは特に、運動負荷をかけることでの血流の再分布に考慮して負荷量を調整する必要がありますが、

平均血圧(MAP)が60mmHg以上あれば、なんとか諸臓器への血流は保たれていると判断していいと思います。

 

"以下、引用元の2021年4月の文献です "

血液がすべての組織に効率的に届くためには、少なくとも60mmHg必要であると書かれています。

MAP functions to perfuse blood to all the tissues of the body to keep them functional. Mechanisms are in place to ensure that the MAP remains at least 60 mmHg so that blood can effectively reach all tissues.

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

起立性低血圧の定義は、収縮期血圧が20mmHg以上低下した場合とされています。

これらにより、血液脳関門(BBB)

血液脳関門 - 脳科学辞典

が破綻した脳外科患者では、脳血流低下などのリスクによりペナンブラに影響がでることが懸念されます。

 

ですが、それ以外の場合は収縮期血圧のみでなく、平均血圧にも目を向ければ、焦らず対処することが出来ると思います。

まとめ

  1. 血圧は血圧(BP)=心拍出量(CO)×全末梢血管抵抗(TPR)で決まる

 2.平均血圧=(収縮期血圧拡張期血圧)÷3+拡張期血圧

   で求めることができ、平均血圧60mmHg以上あれば諸臓器への血流は保てている。

 

 3.前負荷と後負荷の評価を行い、どれが原因で血圧に変動が起きたのかを推察していく。

 

 

 

以上になります。

また分からないことがあればコメントやお問い合わせから、お気軽にお声掛けください。

 

次回はこれらの血圧変動の知識も踏まえた上で、心不全の話を出来ればと思っています。

 

今回使用した参考書は以下です。

 

 

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